医薬品、環境化学物質、食品添加物など様々な人工的な化学物質に加え、食品の中に含まれる自然由来の成分でさえ、生体内に取り込まれたときには、それは生物にとって「異物」となります。私たちを含め、生物は外来異物(xenobiotics)が生体に対して毒性を発現する前に、速やかにこれらの化学物質を体外に排泄する機構を有しています。

 

シトクロムP450は、xenobiotics解毒の最前線で働く酵素です。シトクロムP450の多くは、もともとは生理活性物質の合成・代謝を担う酵素として進化してきたと考えられています。酵素にしては珍しく基質特異性が低いため、本来の基質となる生理活性物質以外にも、様々なxenobioticsを代謝することができ、その分子種(種類)も多種多様です。シトクロムP450は生物界に広く分布し、環境に適応して進化してきました。「毒」をもつ植物と共存できる昆虫のシトクロムP450はその典型です。彼らは、シトクロムP450を中心に植物トキシンを代謝・解毒する機構を発達させて、「毒」であふれる環境で棲息できるように適応してきたのです。私たちは、このシトクロムP450を中心に、生物が持っているxenobioticsの解毒機構を調べています。

 

Xenobioticsの中でも、世界規模で広がる環境汚染物質は多くの階層の野生生物に蓄積されています。一方で、xenobioticsを迎え撃つ野生生物のシトクロムP450は、ヒトや実験動物と違って殆ど知られていません。私たちは野生生物にどのような環境汚染物質が蓄積し、どのような毒性影響が出ているのか、そしてそれらに対抗するためにどのような解毒機構を持つのかを知るため、シトクロムP450の遺伝子をクローニングしてその機能を調べたり、DNAマイクロアレイで網羅的に遺伝子変化を検出したりしています。また、野外レベルの毒性学実験(フィールドトキシコロジー)にも精力的に取り込んでおり、環境汚染が急速に進行しつつあるアフリカを舞台にヒトや家畜、野生動物への毒性影響評価を行っています。

 

化学物質で氾濫する環境に適応して獲得してきた生物の解毒機構を、是非私たちと一緒に解明していきませんか?

 

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