平成29年4月
大学院獣医学院長
昆 泰寛

 

ご挨拶

 

 この度、獣医学院長を拝命しました。北海道大学の学院・研究院体制は、平成17年度から導入を開始し、獣医学研究科は医学、歯学、経済学とともに平成29年度に本体制へ移行することとなりました。私はその初代の学院長でありますことから、そのミッションにつきましては、一から勉強させていただく所存です。学院・研究院体制は、大学院組織を教育上の観点から編成する「学院」 と、研究上の観点から編成する「研究院」に分離するものであり、次のような利点を持つと言われます。1)個々の教員の研究領域に縛られることなく、教育資源を再配分することが可能となります。2)社会の求める人材の養成にあたり、教員組織再編を伴わずに教育組織を再編可能となります。つまり、柔軟性と機動性を合わせ持つ組織体制と言えます。

 果たして獣医学研究科には、このような学院・研究院制体制が馴染むか否かについて10余年の年月を必要としました。昨今は、異分野融合教育に対する期待は益々高まっており、専門知識を基盤としながら異分野の知を融合して高度かつ柔軟な知のプロフェッショナルを育成することは、社会全体にとっての最重要課題であるとされてきました。獣医学におきましても例外ではなく、新興・再興感染症を代表とする疾病に対し、世界的規模で異分野が集結し人材育成する必要から国際感染症学院が誕生しました。さらに、動物医科学・最先端獣医療・世界環境保全のプロフェッショナル育成に特化する社会的な必要性から、新たな獣医学院が編成されました。

 地球上の健全な生態系の維持は、ヒトと動物両者の健康が相まってはじめて達成されるという理念のもと、世界的規模で獣医学・獣医療、動物医科学の高度化・専門化が進んでおります。獣医学院は、実施中の「博士課程教育リーディングプログラム」で構築した国際性及び獣医科学の専門家養成を重視した大学院カリキュラムを、さらに発展・強化させて教育を実施します。すなわち、獣医学院の使命は、動物生命科学、臨床獣医学、ならびに環境獣医学の3領域を柱とする獣医療と動物医科学に焦点を置いた、理念に基づく広い視野、柔軟な発想力および総合的な判断力を養い、我が国のみならず世界の獣医科学の発展に寄与する実践的な能力と指導力を備えた人材を育成することです。

 その目的の達成のため、学内外を問わず獣医学の学位を取得しようとする強い意志を持つ学部学生及び社会で活躍しながら博士の学位取得を目指す人材を選抜し、さらに国際性の観点から、外国人留学生も積極的に受け入れていきます。「博士課程教育リーディングプログラム」で構築した「獣医科学基礎科目群」、「アカデミックイングリッシュ」、「先端獣医科学科目群」、「ケミカルハザード対策専門家養成コース」、「海外/国内インターンシップ」および「獣医科学特別研究・獣医科学特論演習」を実施する他、「研究倫理演習」を新設すると共に、新たに「臨床重点トラックコース」を設け、リーダーとなる臨床家養成を行います。

 これら教育課程を修了した暁には、獣医科学および関連領域における学術基盤と幅広い視野、ならびに高度な専門的知識・技術を有し、問題の全体像を俯瞰しその解決を可能とする洞察力と柔軟な発想力を持つ、One Health実現のために国際舞台でリーダーシップを発揮できる博士(獣医学)が誕生するものと確信します。これらのミッションに向かい微力ながら努力していく所存であります。ご指導ご鞭撻ならびにご支援ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

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