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獣医学部

 北海道大学における獣医学教育は1880年に始まりました。以降、獣医学講座、農学部獣医学科を経て1952年に獣医学部が設置され、国立大学では唯一の独立した獣医学部としての歩みを進め、現在に至ります。本獣医学部は、設立当初から臨床教育のみならず、動物医科学/生命科学全般にわたる基礎・応用研究に基盤を置いた教育を行い、関連する広範な領域において国内外で活躍する数多くの優れた人材=獣医師・獣医学士を輩出し、獣医学専門教育機関としての社会的責務を果たしてきました。その基本理念は今も変わりません。つまり、私たち獣医学部の使命は、“人・動物・環境の健康・健全”の“環”をつなぐ資質・能力を備え、“環”を構成する一人として、伴侶動物・産業動物の獣医療、ライフサイエンス、公衆衛生、畜産/食品/製薬等の各種関連産業、アカデミア等、幅広い領域での役割をアクティブに果たせる人材、人類社会・地球社会の未来を築く人材を育成することにあります。

 

 そのために、現代では、世界に通用する、獣医師としての“国際水準”を備えた卒業生を送り出し得る教育が不可欠です。特に過去15年間ほどの間、私たちはいくつかの学士課程教育改革プログラムを通して、国際的視点や動物倫理観の涵養、臨床教育の強化、教育手法の刷新や他大学との教育連携に取り組んできました。それらを加速するために、2012年には、北海道大学・帯広畜産大学共同獣医学課程(VetNorth Japan)を設置し、両校あわせて1学年80の学生に対して同一カリキュラムでの教育を実践しています。VetNorth Japanの主たる特色は、両校の教育・研究資源(教職員、施設、設備、学外環境等)の完全な相互補完活用、face-to-faceを基本とした教員・学生の相互乗り入れによる教育、臨床系・公衆衛生系の実践的教育と研究を基盤とした教育の両立と強化、自学自習環境の整備、ならびに教育の質保証の仕組み作りにあります。私たちは、“国際水準”を超える獣医学教育の仕組みと体制を創り、優れた獣医師・獣医学士を供給するとともに、日本の獣医学教育のレベルアップを牽引すべく、欧州獣医学教育機関協会(EAEVE)による欧州水準認証を2020年に取得するために様々な改善に取り組み、2019年に完全認証を取得しました。

 

 私たちが、この共同獣医学課程で育成を目指す人材の具体像は、

  1. 獣医師としての任務を遂行するための倫理観と、倫理観に裏打ちされた行動規範を身に付けた人材、
  2. 動物疾病の予防・診断・治療、動物の健康の維持増進、公衆衛生等に関する卓越した知識・技能を備えた人材、
  3. 安定した食糧供給、家畜と畜産物の安全確保、人獣共通感染症対策など、地球規模課題の解決に貢献するための国際的視点と知識・技能を備えた人材、
  4. 最先端の生命科学研究に触れ、新たな生命現象の仕組みや医薬品の開発などにおいて獣医学を基礎とした課題解決能力と国際的な活動を実践する能力を備えた人材です。

 

大学院獣医学研究院

 大学院獣医学研究科は、1953年に創設されました。1995年の大学院重点化、2004年の国立大学法人化を経つつ、獣医療/動物医科学研究・教育のフロンティアを担う大学院組織として、国内外の関連学術領域と社会に向けて特色ある研究成果と優れた博士人材を提供してきました。これは、全ての教職員とそこで学んだ全ての学徒にとって誇りとするところです。例えばCOEとグローバルCOE(2004年~2013年)による感染症系研究の進展や博士課程リーディングプログラム(2012年~2018年)をはじめとする様々な教育改革プログラムの実践を通した意欲的な教育改善は、私たちの姿勢と成果を明確に例示すものと云えます。しかし、今日、学術研究と大学院教育の有り様は、一層深化しつつあると同時に、一方では、いわゆる“One Health”のコンセプト、つまり“人・動物・環境の健康・健全の環”を創生・維持する研究・教育の完遂に向けて、より学際的、かつボーダーレスな進化が求められています。私たちは、2019年から、総合大学の利点を活かした獣医系と医歯薬保健科学系の連携、これまでの実績を生かした国内外諸機関との連携,ならびに人獣共通感染症、ケミカルハザード対策、獣医科学および関連領域の卓越した教育研究リソースの活用により、人と動物の健康と共生・地球上の健康(One Health)のために解決が必要な諸問題、技術革新が求められる課題等に挑戦し、それらの解決・克服を通じてOne Healthの実現に貢献する思考態度と能力を備えた博士人材の育成を目的とする先導的な博士課程学位プログラムOne Healthフロンティア卓越大学院」を構築し、実践しています。

 

 こうした学際的・分野横断的な大学院教育を推進するには、教育の趣旨と内容に沿って教員を適正に配置し、効果的、意図的に活用することが重要です。この基本的な考え方に基づいて、2017年4月から、私たちは大学院獣医学研究科の組織を、教員組織/研究組織である獣医学研究院と、大学院教育組織である学院とに再編成することにしました。感染症に関する学際・包括的な高等教育と国際的な対策専門家の実践的な育成を行う新しい学院が国際感染症学院であり、獣医学研究院の感染症系教員、人獣共通感染症国際共同研究所の教員、医学等関連研究院の教員が集合して、その教育にあたります。一方、感染症系以外の獣医学研究院教員が基礎、応用、環境、臨床、それぞれの研究活動を基に動物医科学/高度獣医療の高度教育を行うのが獣医学院であり、臨床重点トラックの設定など従来にない方向性への挑戦を含む教育活動を展開します。

 

 大学院学生は、学院に所属して広範な学問を学び、研究指導を受けますが、研究の場は、当然、獣医学研究院であり、この点は基本的に従来と変わりません。大学の最も重要な役割と責務は、研究と、研究に基づく教育の実践です。獣医学研究院は、まさにその実践を支える基盤組織です。研究者である個々の教員と学生は、ともに、これからも動物医科学/高度獣医療の、多様で魅力ある、そして本質的な科学研究を世界に向けて打ち出し、世界に問いかけていきます。