令和3年4月
獣医学研究院長
滝口 満喜

 

 

 平成29年、大学院獣医学研究科は、教育組織と研究組織が一体化していた研究科を、教員が所属する研究組織である「獣医学研究院」と、大学院生が所属する大学院教育組織である「獣医学院」および「国際感染症学院」へと改組しました。時代や社会の要請に応じて、必要とされる研究と人材育成を推進する教育組織を柔軟かつ機動的に構築することを目的とするものです。

 獣医学研究院に所属する教員は、獣医学院あるいは国際感染症学院における大学院教育を担当します。国際感染症学院では、獣医学研究院の教員のうち感染症研究を専門とする教員、人獣共通感染症国際共同研究所、および医学研究院の教員が結集して、感染症に特化した大学院教育を行います。一方、獣医学院は老舗の獣医学研究科を引き継ぐ大学院教育組織です。平成29年度に発足した2つの大学院では、博士課程教育リーディングプログラム「One Healthに貢献する獣医科学グローバルリーダー育成プログラム」(平成23-29年度で構築した大学院教育プログラムをさらに発展させ、俯瞰力、実践応用力、および総合的問題解決能力をもってグローバルに獣医科学の発展に貢献できる博士人材の育成に努めています。両学院の大学院教育内容については、それぞれの学院のホームページを、学部教育の内容については、学部のホームページをご覧下さい。

 獣医学研究院は、今から約100年前に発見され、1926年のノーベル生理学・医学賞の候補となった、市川厚一博士・山極勝三郎先生による化学発癌の研究を源流とする学術研究への情熱と志を引継ぎ、獣医科学研究のリーディング大学として特色ある研究活動を継続しています。北海道大学の特色の一つである人獣共通感染症・動物感染症の分野では、地球規模での病原疫学調査研究、宿主-寄生体相互作用の解析、あるいは診断・治療法の開発などで、世界をリードする研究を進めています。アジア随一の施設と規模を誇る動物医療センターを拠点として、汎動物学(Zoobiquity)的アプローチによる高度獣医療研究を展開しています。また、フィールドワークを得意として、地球規模で環境毒性および野生動物・生態系に関する保全医学的研究を展開していることも特色の一つです。さらには、生体全体を“診れる”動物医科学としての特徴を生かしたライフサイエンス研究により、生命現象の解明や医薬品の開発などにも貢献しています。

獣医学研究院は、自由な発想に基づく知的創造活動としての基礎研究を推進するとともに、技術開発あるいは社会問題の解決を目指す応用開発研究を通じて、研究成果の社会実装による社会貢献を意識しつつ、獣医科学研究のフロントランナーとしての役割を果たす所存です。また、次世代を担う獣医科学者を育成するための教育研究にも一層注力致します。関係各位からの一層の支援とご指導・ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。