近年、世界各地で新興・再興感染症として人獣共通感染症(Zoonosis)が発生しています。これらの流行は森林伐採・農地開墾などの地球環境の変化のため、病原体保有野生動物や媒介節足動物と人の接触の機会が飛躍的に増大したことによると考えられています。

 

当研究室ではウイルス性人獣共通感染症の制圧を目標として、日々研究を進めています。中でも、人に重篤な病原性を示すウイルス性人獣共通感染症として重要なフラビウイルス感染症及び、ブニヤウイルス感染症を中心に研究を行っています。

 

フラビウイルス感染症はフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスが原因となる感染症で、日本脳炎・西ナイル熱、デング熱、黄熱病、ダニ媒介性脳炎等の、人に対して脳炎・出血熱等の重篤症状を引き起こす人獣共通感染症が多く含まれています。フラビウイルスの特徴として、自然界では蚊・ダニなどの節足動物がウイルスの伝播に重要な役割を果たしているという点があり、人や動物はウイルス保有節足動物の吸血により感染します。

 

ハンタウイルス感染症はブニヤウイルス科ハンタウイルス属のウイルスが原因となる感染症で、人に対して腎症候性出血熱及びハンタウイルス性肺症候群を引き起こします。様々なげっ歯類がハンタウイルスを保有しています。

 

また2013年に日本での患者が確認された、重症熱性血小板症候群(SFTS)を引き起こす原因であるSFTSウイルスも同じくブニヤウイルス科に属するウイルスで、まだその生態などは不明な点が多いですが、ダニの吸血が感染に重要であると考えられています。

 

SFTSの例のように、このようなウイルスに感染する危険性があるのは日本も例外ではなく、感染した場合、重篤な症状を引き起こし死に至る可能性もあることから、感染症対策を行うことは公衆衛生上重要な課題です。

 

我々は、このようなウイルス性人獣共通感染症の制圧を目標に、

 

  1. 自然界における生態、伝播経路の解明、
  2. 病原性の分子基盤の解明、
  3. 診断・予防法の開発

 

に関する研究を行っています。

 

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