北海道大学獣医学部では、地球上の全ての動物生命に責任を負う自然科学としての獣医学を背景に、動物の病気の診断・治療・予防にとどまらず、安全な動物性食品の供給、医薬品の開発や生物科学への貢献、野生動物の保護・管理と人獣共通感染症の制圧など、獣医学に対する社会の多様な要請に応えうる獣医師を養成することを教育の理念としている。

 

 しかし、獣医学の多様な社会的使命を理解するためには、自然科学だけでなく、人文・社会科学など広範な知識も必要とする。また、獣医学に関わる地球規模の諸問題を解決するためには、科学的な思考力と判断力および国際的視野を養わねばならない。さらに、動物と人間の橋渡しとなる獣医師・獣医学研究者として、豊かな人間性と高度な倫理観を醸成しなくてはならない。

 

 平成24年度入学者から北海道大学と帯広畜産大学は、国際的水準の獣医学教育を実施するため、共同獣医学課程を編成し、北海道というフィールドを生かした実践的かつ先進的な獣医学教育を行っている。北海道大学獣医学部は人獣共通感染症やライフサイエンス研究、生態系保全や小動物臨床を重点に、また帯広畜産大学は産業動物診療、生産獣医療や獣医公衆衛生学教育を重点に教育研究を行ってきた。近年、獣医学は様々な社会的要請、例えば食の安全・安心の確保、動物由来感染症の拡大防止、飼育動物の疾病の多様化や診断・予防・治療技術の高度化、動物愛護や野生動物保護管理など、に対応しなければならない。このため、両大学がそれぞれ有する優位な教育資源を結集して、これまで一大学だけでは成しえなかった教育課程を編成し、いくつかの講義科目は北大教員が帯畜大で教授し、帯畜大教員が北大で教授する。また、学生が移動する演習や実習、およびITを用いた双方向遠隔授業も行う。

 

 これらの教育改革で、多様な獣医学の社会的使命を理解し、科学的な思考力と判断力および国際的視野を備えた創造性と人間性豊かな獣医師および獣医学研究者が育成されて行くことを確信する。