平成29年12月

堀内 基広 (昭和61年卒)

 

 昨年同様、11月に降った雪が根雪になりそうな気配を見せていますが、同窓兄姉におかれましてはご健勝のことと存じます。

 

 平成29年4月、大学院獣医学研究科は、学院・研究院へと改組して、教員が所属する研究組織である「獣医学研究院」、大学院教育組織である「獣医学院」および「国際感染症学院」として新たなスタートを切りました。1953年(昭和27年) の獣医学部設置、1996年(平成7年) の大学院重点化による大学院獣医学研究科の設置に続く、3度目の大きな改組となります。これまで様々な場で説明する機会がありましたが、異口同音に「判り難い」と言われます。仰せの通り判り難いのですが、学院・研究院化は、時代や社会の要請に応じて、必要とされる研究と人材育成を推進する教育組織を柔軟かつ機動的に構築することを目的とするものです。獣医学院は獣医学研究院に所属する教員が教育を担当し、国際感染症学院は獣医学研究院に所属する教員のうち感染症関係を専門とする教員、人獣共通感染症リサーチセンター(以降 人獣センター) の教員に加えて、医学研究院の教員1名、および国際教育研究連携局の教員が教育を担当します。獣医学院は世界に通用する動物医科学・獣医療に資する人材育成を目標に掲げ、国際感染症学院は、感染症の制御というミッションをより明確に持ち、2つの学院が専門性を深化させるとともにこれまで以上に協力して、動物、人、環境の健康・健全のために世界の課題解決に貢献する、つまりOne Healthに貢献することを目標に、教育研究に邁進致します。大学院教育組織としての獣医学研究科が、学内関係部局の協力を得つつ2つの学院に分かれた形になりますが、これまで以上に教員が連携して大学院教育を実施します。新たな船出の時点では判り難い組織かもしれませんが、数年後に修了生を輩出する頃には、理解が浸透していることを期待しております。なお、獣医学部の教育は獣医学研究院に所属する教員が担当し、一部人獣センターの教員にも協力して頂きます。

 

 この改組に伴い、英語でDeanと名のつく職が3つ出来ました。第1は教員組織としての大学院獣医学研究院(英名:Faculty of Veterinary Medicine) の研究院長(小職)、第2は大学院教育組織としての大学院獣医学院(英名:Graduate School of Veterinary Medicine)の学院長(昆泰寛先生[昭和56年卒])、第3は新設された大学院国際感染症学院(英名:Graduate School of Infectious Diseases)学院長(大橋和彦先生[昭和58年卒]) です。教員組織の長である研究院長が同窓会会長を務めることになります。副研究院長には動物病院長を兼ねる滝口満喜先生(昭和62年卒)、獣医学院の副学院長は片桐成二先生(昭和60年卒)、国際感染症学院の副学院長には人獣センターの高田礼人教授(平成5年度卒) が就任されました。2つの学院が誕生しましたが、教授会はこれまで同様、獣医学研究院(旧獣医学研究科)と人獣センターの教員が一堂に会して開催しています。北大内に留まらず、学外からも注目されている改組ですので、船頭多くして船山に登ることのないよう、共通の目標である「動物、人、環境の健康・健全のために」を常に意識して、教職員一丸となって適切な組織運営を進めてまいります。

 

 ご存じのように、平成24年度に獣医学部と帯広畜産大学は共同獣医学課程を組織して、北海道というフィールド、および、お互いの特徴と強みを活かした先進的な獣医学教育を開始しました。その第一期生が平成30年3月に卒業して社会に出て行きます。共同獣医学課程の善し悪しを測る物差しはありません。今後、彼らの受け皿となる社会が、これまでの獣医師養成教育を受けた学生との相違などを評価する過程で、共同獣医学課程のアウトカム(養成できる人材の能力) が徐々に明らかになるものと思われます。また、11月21,22日の両日、遠隔事業システムで北大と畜大を結び、卒業予定の6年生69名(北大41名、畜大28名) の課題研究論文(従来の卒業論文に相当) を開催しました。

 

 この間獣医学部と帯広畜産大学では、共同獣医学課程の教育体制・内容が国際水準にあることを担保するために、欧州獣医学教育確立協会(The European Association of Establishments for Veterinary Education, EAEVE) による認証取得による獣医学教育の質保証を目指して、大学改革強化推進補助金「国立獣医系4大学群による欧米水準の獣医学教育実施に向けた連携体制の構築(通称:4大学連携事業:平成24〜29年度) の支援を受けて、欧米獣医系大学に互する獣医学教育の構築を進めてきました。この補助金は、前々研究科長の伊藤茂男先生(昭和48年卒) の尽力により獲得したもので、伊藤先生退官後は前研究科長の稲葉睦先生(昭和57年卒) が運営を引き継がれました。本事業ではこれまで何度かEAEVEの専門家を招聘して非公式にアドバイスを頂いてきましたが、平成29年7月にEAEVEの専門家による事前公式訪問診断(Consultative visitation, CV) を受けました。その際、3つのMajor deficienciesと8つのMinor deficienciesが指摘されましたが、専門家から、それらは容易に改善可能であるから公式診断を受けることを勧められ、平成31年度に公式診断を受けるべく、帯広畜産大学と協力しながら鋭意改善に取り組んでいます。

 

 平成25年にスタートした大学の世界展開力強化事業(平成25〜29年度) では、東京大学と酪農学園大学と共同で、タイのカセサート大学との単位互換を伴う学生の相互派遣を進めて来ました。北大の学生は、3ヶ月間カセサート大学で、産業動物、野生動物などの教育を受け、同時期、北大ではカセサート大学の学生を受け入れてきました。この事業は学部教育の国際化に多大な貢献をしてきましたが、平成29年度が事業最終年度となります。活動の様子は、同窓会便りの項をご覧下さい。

 

 平成29年、学部教育ではもう一点大きな変革がありました。それは、獣医学共用試験(Computer-Based Test [vetCBT]とVeterinary Objective Structured Clinical Examination [vetOSCE]) の正式実施です。VetCBTでは参加型臨床実習を行う学生の基礎知識を評価し、vetOSCEでは臨床実習を行うための基本的な臨床能力を確認します。昨年度はトライアルを実施しましたが、平成29年6月、5年生を対象にvetCBT/OSCEの本試験を実施しました。当然ながら受験者は全員合格し、参加型臨床実習を実施しています。

 

 大学院教育は前述したように、本年4月に獣医学院と国際感染症学院として新たな歴史が始まりました。平成23年度に採択された大学院教育改革の最上位プログラムである博士課程教育リーディングプログラム「One Healthに貢献する獣医学グローバルリーダー育成プログラム」(平成23〜29年度)では、2つの大学院で継承される大学院教育カリキュラム、およびカリキュラム以外の様々な制度を構築・導入してきました。詳しくは、同窓会便りの項をご覧下さい。

 

 本年まで獣医学研究科(現獣医学研究院)の大学院および学部教育は、前述の4大学連携事業、世界展開力強化事業、および博士課程教育リーディングプログラムの大型予算により、充実した支援を受けてきました。この3つのプログラムが平成29年度でそろって終了します。これが獣医学研究院が直面する平成30年度問題です。さらに、本年、北海道大学は財政赤字の健全化のため教員の人件費ポイント7.5%減の措置に踏み切りました。北大内では常に外部資金を獲得して、特任教員などを雇用しつつ教育研究を高いレベルで維持してきた本研究院にとっては頭の痛い事態です。来年の見通しが立たない状況下、本年度は研究院と人獣センターにとって嬉しい知らせも多々ありました。人獣センターの統括、北海道大学のユニバーシティプロフェッサーである喜田宏先生(昭和42年卒) がウイルス学・国際貢献の顕著な業績から文化功労者に選ばれました。公衆衛生学教室の好井健太朗准教授(平成14年卒) が日本獣医学会賞と日本ウイルス学会杉浦奨励賞を受賞しました。

 

 教員の異動についてご報告致します。平成29年1月にELEWA YASER HOSNY ALI氏が外国人テニュアトラック制度を活用して解剖学教室特任助教に採用されました。一方、平成29年3月に附属動物病院助教の中村健介氏が宮崎大学准教授として、微生物学教室特任助教の日尾野隆大氏が産業総合研究所研究員として転出されました。平成29年6月には、附属動物病院助教の星野有希氏が岩手大学准教授として転出されました。

 

 北大の人件費ポイントの削減、大型外部資金の事業支援期間の終了など、厳しい状況でありますが、これまで先達は逆境を追い風のようにとらえ、連綿とした教育研究活動を維持・発展させ、現在の教育体制を整えてこられました。その系譜を受け継ぐ現役の教員が一丸となって知恵を絞り、平成30年問題を乗りこえ、獣医学および獣医科学のリーディング大学としてさらなる飛躍を目指す所存です。また、学部、大学院の教育ともに、大学だけで完結できる時代は過ぎ去りました。学外の官産諸機関と連携しつつ優秀な人材を育成することが大学に求められています。同窓兄姉には、これまでの支援に感謝しつつ、今後より一層のご支援、ご協力ならびにご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。