会長挨拶(令和4年)
滝口満喜(昭和62年卒)
作年度より同窓会会長を務めさせていただいております滝口です。至らぬことが多々ございますが、引き続きどうぞよろしくお願い致します。
2月にはじまったロシアのウクライナへの軍事侵攻はいまだ停戦の兆しが見えず、多くの民間人が戦争の犠牲となり、国連の機能不全も相まって、国際社会の動向に暗い影を落としています。一方、国内では7月に安倍晋三元総理大臣が選挙の応援演説中に銃撃されて亡くなるという世間を震撼させる前代未聞の大事件が起こり、このような事件が日本で起こりうるのかといまだに信じがたい気持ちでいっぱいです。故安倍晋三国葬儀が日本武道館で執り行われ、世論が割れる中での国葬の実施となり、国民の分断が懸念されています。
そのような不安な社会情勢の中、今年もコロナ禍の非日常が続き、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための北海道大学の行動指針(BCP)も令和4年4月1日より制限(小)のレベル1がいまだに続いています。ようやく後期の授業から、感染防止対策を十分に講じたうえで全面対面での実施となり、コロナ前の日常に戻りつつあります。昨年の同窓会フォーラムは、本来の学生生活を送ることができない厳しい状況が続く中、少しでも学生たちを励ましたいという想いで、各界で活躍する同窓の先輩獣医師からコロナ禍の現役学生に向けてオンラインでエールを送ってもらうという企画を立てました。今年はホームカミングデーの趣旨にのっとり、昭和60年卒のアラ還同窓生に札幌で同期会を開催いただき、フォーラムで現役学生に熱いメッセージをいただとともに、旧交を温めていただくことにしました。詳細は本誌をご覧ください。
昨年は東京オリンピックのマラソンコースに本学が選ばれ、美しいキャンパスとともに、世界のアスリートがメインストリートを駆け抜ける姿が全世界に放映され、北大の知名度も上がったのではないかと思われます。今年は、イギリスの高等教育専門誌Times Higher EducationのTHEインパクトランキング2022において、北大が総合ランキングの対象となった世界1,406大学中,日本初の世界10位(国内1位)にランクインしました。また,SDG目標別ランキングにおいては,17のSDG目標のうち,「SDG2 飢餓」(世界1位),「SDG17 パートナーシップ」(同12位),「SDG14 海洋資源」(同17位),「SDG15 陸上資源」(同18位)など、高い評価を得ました。今回の結果はSDGs達成へ向けた本学の長年にわたる取り組みが評価されたものと考えますが、中でも獣医学研究院・獣医学部の貢献は大きいと感じており、紙面を借りて関係各位に謝意を表する次第です。
平成24年度に設置した北海道大学獣医学部・帯広畜産大学畜産学部共同獣医学課程は今年10年目を迎えました。2019年に欧州獣医学機関協会(EAEVE)による完全認証を取得しましたが、その過程で教職員、学生およびステークホルダーがPDCAサイクルを意識して教育改善に取り組む質保証(QA)の重要性を学び、継続的な教育改善を可能とする自律的な教育のQAに取組む組織力を修得しました。QAの取組みを進めて本審査で指摘された改善点を克服し、来年の中間評価、さらには2026年の再審査に向けて努力して参ります。
獣医学部では、学部教育の国際化推進を目的として国際獣医師人材を育成する獣医学教育世界展開プログラム(IVEP: International Veterinary Education Program)を進めております。今年度が最終年度となりますが、今年は学生の派遣を3年ぶりに再開し、学生のいきいきした表情や活発な活動姿勢を垣間見ることができ、このプログラムのすばらしさを改めて認識した次第です。こうした国際交流経験を学生時代に持つことによって、現実に起きている様々な問題に対して多面的に考える素地を養い、問題解決能力の向上に役立ててほしいと願って止みません。
大学院においても一昨年採択された大学の世界展開力強化事業「アフリカと日本の架け橋となる次世代の人材を育成する国際獣医学・保全医学教育プログラム~ザンビア-北大の頭脳循環成果を基盤として~」の中で学生の受入れ・派遣がともに実施され、双方の学生から喜びと感謝の言葉が届いております。
上記で触れた諸活動、共同獣医学課程の実施等を含め、獣医学研究院・獣医学部、獣医学院、国際感染症学院では、学院・研究院化がスタートした平成29年度から学院の第1期生を輩出した令和2年度までの4年間の活動の自己点検評価を行い、本年3月に外部評価を実施して内容を外部評価報告書として取りまとめております。全般には大変高い評価をいただいておりますが、相応に当を得た厳しい指摘もいただいております。この外部評価書は研究院・学部ホームページ(「獣医学部・獣医学研究院について」→「獣医学部/獣医学研究院の詳細」から「外部評価報告書」へ)に全文を公表しておりますので、是非、ご一読いただいて現状を知る一助としていただきますとともに、ご意見を頂戴いたしたく存じます。
最後に、昨年の本会誌発行から本年9月末までの間の教員の異動についてご報告致します。まず、中山翔太氏(平成20年卒)が令和3年11月1日付で毒性学教室准教授に昇任されました。また、令和4年4月1日付で大橋和彦氏(昭和58年卒)が国際連携推進室特任教授へ異動、森松正美氏(昭和62年卒)が実験動物学教室教授、佐々木東氏(平成20年卒)が附属動物病院講師に昇任されました。さらに、7月1日付で今内覚氏(博士・平成16年修了)が感染症学教室教授に昇任、中村鉄平氏(平成15年卒)が実験動物学教室准教授に着任、8月1日付で横山望氏(博士・平成29年修了)が獣医内科学教室助教に着任、さらに10月1日付で村田史郎氏(平成16年卒)が感染症学教室准教授に昇任されました。
一方で、令和4年3月31日付けで安居院高志氏(昭和54年卒)が実験動物学教室教授を定年退職され、附属動物病院特任助教の出口辰弥氏(博士・平成31年修了)が退職、酪農学園大学助教に転出されました。さらに比較病理学教室准教授の小林篤史氏(平成14年卒)が9月30日付で退職され、長崎大学に異動されました。
以上に述べました通り、獣医学研究院・獣医学部では様々な事業が活発に展開されております。北大の教員人件費ポイント削減による正規教員の減少という厳しい環境の下、それを支える教職員の一部は外部資金による年限付きポストです。この矛盾を解決する妙案は持ち合わせておりませんが、教職共働の精神のもとに心を一つにして、この難局を乗り越えるべく努力して参る覚悟です。同窓兄姉には、これまでの支援に感謝しつつ、より一層のご支援、ご協力ならびにご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。