令和7年4月
獣医学院長
乙黒 兼一
ご挨拶
2025年4月より獣医学院長を拝命いたしました。明治期に軍馬の育成・診療から始まった我が国の獣医学は、時代の移り変わりとともにウマやウシなどの産業動物やイヌ・ネコなどの伴侶動物の獣医師にとどまらず、実験動物や野生動物を含む地球上のあらゆる動物を対象とした生命科学の発展や、世界規模のヒト・動物・環境の健康維持に寄与する、きわめて多様な事象にまたがる広範な領域におよぶ学問分野に発展しています。北海道大学大学院獣医学院は、そのような社会的な必要性にも対応すべく、動物医科学/汎動物学・最先端獣医療・世界環境保全のプロフェッショナルの育成に特化し、2017年に編成された比較的新しい大学院組織です。
獣医学院は、基礎獣医科学講座、応用獣医学講座、環境獣医学講座、臨床獣医学講座の4講座14教室で構成されています。それぞれの専門分野に精通したこれらの研究室が互いに連携し、さらに国内外の研究組織と共同することで、高度化・専門化が進む生命科学や動物医科学、環境保全学などの分野を牽引しています。獣医学院では、将来、私たちとともに学問・研究に邁進する研究者や、関連する様々な分野で活躍できるプロフェッショナルを輩出すべく、専門的な知識や技術はもちろんのこと、グローバルな視点をもち、異分野とも垣根なく交流できる、創造性豊かな人材の育成をめざしています。そのために、研究分野での国際語として必須な英語の実践力を向上させる「アカデミックイングリッシュ」、学術基盤・倫理観を修得する「獣医科学基礎科目」「研究倫理演習」、専門性の高い学術基盤となる「先端獣医科学科目」「ケミカルハザード対策専門特論」「総合専門臨床特論」、総合的な研究能力を養成する「獣医科学特別研究」「獣医科学特論演習」など、充実した大学院カリキュラムを実施しています。
文部科学省が策定したいわゆる「ポスドク一万人計画」がスタートして20年以上が経過しました。当初は、博士人材の増加による負の面が強調された報道が多く、今でもそのイメージが色濃く残っているかもしれませんが、博士号取得者を取り巻く環境は大きく変化し、着実に発展しています。即戦力として期待できる博士課程修了生は、政府機関や国際機関、世界的企業などで採用が増加しています。一部の組織では博士人材を優先的に採用しており、有業率は学士卒や修士卒よりも高いことは厚生省の統計調査からも示されています。また就学中の経済的支援も多様化しており、獣医学院のほとんどの在学生は、何らかの教育研究支援経費を受給して学位取得を目指しています。獣医学院では、一般入試のほかに自学部外特別選抜や社会人入試、外国人留学生入試など、複数の選抜システムから多様な人材を受け入れています。「臨床重点トラック」では、臨床経験を有する者を対象に、研究マインド・能力を備えた指導的役割を果たせる臨床獣医師を育成します。
獣医学院では、このように充実した教育・研究環境のもと、将来の獣医科学を担う志ある皆さんの挑戦を心より歓迎いたします。私たちは、学問の深化とともに、現代社会が直面する多様な課題に果敢に立ち向かう、柔軟で創造的な人材の育成に力を注いでいます。世界を舞台に活躍したい方、動物と人間の未来を見据えた研究に携わりたい方、ぜひ北海道大学大学院獣医学院の門を叩いてください。皆さんの情熱と可能性が、本学院の新たな力となることを、心より楽しみにしております。