国際獣医師育成プログラム〜カセサート大学〜

 


  • 報告書

  ・2024年度

  ・2023年度

  ・2022年度

  ・2021年度 派遣・受入ともに中止

  ・2020年度 3/18にOnline Joint-Presentation開催

  ・2019年度

  ・2018年度


AIMSプログラムによる学生交流プログラム10周年記念シンポジウム

日本とタイの獣医教育協力:アジアの健全な発展のために

Symposium Commemorating the 10th Anniversary of the Student Exchange Program under the framework of AIMS program

(Japan-Thailand Veterinary Education Cooperation: for the Sound Development of Asia)

 

AIMSプログラムによる10年間の交流

 日本とタイの獣医学教育における連携は2013年度に文部科学省が実施したASEAN International Mobility for Students program (AIMS)プロジェクトの一つとして始まりました(現在AIMSはAsian International Mobility for Students programと称している)。タイ国はAIMSプログラムの創始メンバーであり、カセサート大学はこの制度の発足当初から中心的な役割を担っています。日本の文部科学省は2013年度に7つのAIMSプログラムを採択して5年間の予算面での支援を実施し、アジア地域における学生交流の基盤形成を促進しました。

 北海道大学を主管校とする獣医学教育プログラムはCollaboration of Veterinary Education (CVE) between Japan and Thailand for Sound Evolution of Asiaと称し、カセサート大学、酪農学園大学、東京大学を交えた4大学によるコンソーシアムの形での取り組みとなっています。このプログラムでは、広い視野でアジアの獣医学発展に寄与できる人材の育成と大学の獣医学教育基盤の整備を目標とし、アジア全体での健全な獣医学の発展に寄与することを目指しました。

 2013年度はプログラム開始に向けた準備とタイでのキックオフシンポジウムを実施し、2014年度から学生の相互派遣を開始しました。2017年度までの5年間のプロジェクト実施期間に日本の3大学からは97名、カセサート大学からは93名の学生を派遣しました。AIMSプログラムは単位互換を前提としたものであるため、各大学では臨床学、感染症学および公衆衛生学を中心とするカリキュラムを提供し、留学先で修得した単位が帰国に所属大学の単位として認定されました。カセサート大学では、アジア地域の感染症や水産業に関連した臨床獣医学と公衆衛生学を中心としたプログラムが提供されました。北海道大学と酪農学園大学は、隣接した2つの都市に立地していることから、共同して学生を受け入れることとし、酪農学園大学では産業動物、北海道大学では伴侶動物分野の臨床および診断学を中心とするプログラムとしました。東京大学では最先端の伴侶動物臨床をコアとするプログラムが提供されました。

 このAIMSプログラムは、計画時に目的とした学生の国際性の涵養、広い視野での獣医学への取り組みおよび学生が自らの能力に対して自身を得る機会となりました。また当初期待した学生教育の改善に加えて、教職員にも教育を通した国際連携を体験する機会が得られたことは大きな収穫でした。本プログラムの卒業生の中からは、アジアを含む海外での活動に関わるキャリア、学位取得や大学教員としての採用など現在もその成果が継続しています。文部科学省の助成が終了した後は、各大学で独自の国際交流事業としてAIMSの枠組みによる単位互換を伴う学生交流が継続されています。次の10年間には、本プログラムで整備された教育の国際連携基盤および本事業に参加した卒業生により、次世代の獣医師によるアジア圏の獣医学発展に向けた取り組みが進むことが期待されます。

 

シンポジウムの概要

 シンポジウムは2024年9月30日(月)にカセサート大学カンペンセンキャンパスにおいて実施されました。カセサート大学、酪農学園大学、北海道大学の各学部長の他、それぞれの大学から数名の教員と今年度の交換留学に参加する各大学の学生11名を含む50名以上が参加しました。

 

 

 

 シンポジウムでは、第1部としてこれまでの活動とこの活動が各大学に何をもたらしたかが紹介され、次いで第2部として交換留学を経験して卒業した学生によるプレセンテーションが行われました。いずれの卒業生も留学後に国際協力活動を経験し、学位を取得、その後も大学あるいは国際機関で獣医学の専門性を活かした活動に携わっており、本プログラムが自身の人生のターニングポイントになったと話していました。第3部では、参加大学の産業動物分野の教員による、プログラム参加学生およびカセサート大学学部生に向け特別授業が行われました。いずれもクリニカルローテーションに参加している学生を意識したややアドバンス的な内容を中心とする講義内容でした。

 

 


 

 

 2020年度は、コロナ禍での交流事業として、チュラロンコン大学、カセサート大学および北海道大学の有志の学生が、1)学生目線での交換留学プログラムの紹介動画作製、および2)共通テーマ(チュラロンコン大学と北海道大学の共通テーマは「狂犬病について」、カセサート大学と北海道大学の共通テーマは「動物ショーについて」)に対する共同発表演習を行いました。両大学の参加学生が定期的にオンラインミーティングを行い、学習内容や動画コンテンツを共有しながら、発表の準備を行いました。


 カセサート大学との学生交流は、2013年度〜2017年度の5年間に実施した大学の世界展開力強化事業AIMSプログラム(日本とタイの獣医学教育連携:アジアの健全な発展のために)を引き継ぐプログラムとなっており、2018年度から5名程度の学生を6-7週間派遣するプログラムとして実施しています。また、上記事業の連携校であった東京大学および酪農学園大学においても、カセサート大学での臨床実習に参加するプログラムを継続しています。

 

 2019年度の派遣プログラムは、9月9日〜10月25日(7週間)にカセサート大学での臨床実習に参加するもので、大動物3週間、水生動物2週間、馬および野生動物にそれぞれ1週間の日程でした。これらの実習では、カセサート大学の教員が成績を評価し、本学ではその報告を受けて単位互換表に基づき本学のアドバンスト演習の単位を認定します。

 

 

 北海道大学では、帯広畜産大学との共同獣医学課程において実践的な教育が十分に行えない領域である水生動物および野生動物の獣医療を本プログラムに組み込むことにより、単なる海外での臨床実習を超えた、本プログラムでしか学べない獣医療教育の機会を提供したいと考えています。また、臨床実習のグループにおいて濃密に接するカセサート大学学生と学びの場所と時間を共有することにも重要な意義があると考えています。派遣学生を対象とする見学型の実習ではなく、派遣先大学での正規授業を履修して、成績評価を受けるという枠組みの中で、ゲストではありつつも「同級生」という立場に近い存在でカセサート大学の学生と交流ができれば、将来共にアジアの獣医学を指導する立場に立つ同世代の獣医学生としてより良い関係を築けるものと考えています。

 

 また、本プログラムでは派遣期間が長く、かつ教員の引率はプログラム開始および終了時のそれぞれ1週間としていることから、学生の実習が安全かつ有意義に実施できるよう十分な事前準備を行う体制にしています。派遣学生が決定する4月以降、学生への情報提供やセミナー開催により派遣および実習に伴うリスクとその回避方法を繰り返し学んでもらう機会を設けています。また、英語によるコミュニケーションスキルの演習および獣医療と安全管理に関する学生自身による事前学習とそのプレセンテーションも含め、派遣前の事前準備に十分な時間をかけています。

 

 最後に、本プログラムは相互派遣の形をとっており2019年度は2020年1月6日(月)〜2月21日(金)の日程でタイからの学生6名を受入ました。受入に関しては、教職員に加えてこれまでに派遣された学生と大学院生を中心とする学生による支援体制も充実させて、カセサート大学からの学生が有意義な時間を過ごし、獣医療に限らず日本の文化など多くを学んでもらいたいと考えています。

 今後とも、本プログラムへのご支援、ご協力をお願いいたします。

 


AIMS(ASEAN International Mobility for Students Programme)プログラム: SEAMEO-RIHED(Southeast Asian Ministers of Education Organization Regional Centre for Higher Education And Development/東南アジア教育大臣機構 高等教育開発地域センター)加盟国を枠組みとする、ASEAN統合に向けた政府主導の学部生向け学生交流プログラムで平成25年度より日本が参加。参加国政府は、AIMSプログラムに参加する高等教育機関を選定し、派遣学生に対して奨学金等の財政的援助を行う。それぞれ25名の学生を12週間派遣・受入する単位互換プログラムが基本となる。


派遣・受入スケジュールは「国際獣医師育成のための海外派遣制度」トップページに掲載しています

 → こちら(https://www.vetmed.hokudai.ac.jp/project/ivep/overseas/)


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