当研究室は、ネコ、マウス、ヒトにおいて尿路上皮が、閉塞などによって壊れると 「17型コラーゲン(COL17A1)」を発現し、COL17A1は尿路上皮の再構築とその下層の局所免疫反応に関与することを見出しました。
これまで当研究室は、ヒトや疾患モデルマウスの病理組織を調べ、腎炎に罹患すると腎臓内の腎盤に三次リンパ組織である尿路関連リンパ組織(UTALS)が形成されることを見出しています。このUTALSの発達には、尿路の上皮バリア機能の低下によって惹起される「上皮下組織への尿の滲出」が関与し、本来皮膚の上皮細胞を基底膜に繋ぎ留めるCOL17A1が尿路上皮の細胞に異所性に発現することを報告しましたが、その意義や他の動物との共通性は不明でした。
本研究ではまず、尿路の閉塞を起こしたネコとヒトの尿管を調べ、その尿路上皮でCOL17A1の発現が増えることを発見しました。次に、人為的に尿管を閉塞させたマウスを調べ、尿路が閉塞した際のCOL17A1の役割を解析しました。その結果、COL17A1は病態の進行に伴い尿路上皮で発現を増やし、さらには腎臓の障害を反映する間接的な病態マーカーになることが分かりました。また、当研究室は腎盤内の上皮が特に壊れやすい部位を同定し、そこからCOL17A1の発現誘導が始まること、さらにCOL17A1は尿路上皮の修復及び局所の炎症誘導に関与することを明らかにしました。
今後のさらなる研究の進展により、COL17A1はネコなどの伴侶動物やヒトの泌尿器病態の診断及び治療法の新たなターゲット分子になることが期待されます。
図1. ヒト、ネコ、マウスの尿路上皮では、その障害時にCOL17A1が異所性に発現した。
図2. 蛍光色素を腎盤の内腔に投与すると、尿路上皮バリアの破綻部位から上皮下層に色素が滲出した。
図3. 尿とCOL17A1は免疫細胞からのケモカイン産生を誘導した。