ネコの尿管疾患における形態変化と診断治療に有用な分子の探索

「汎動物学」とは、ヒトと動物の相同性と差異から病気の成り立ちを考える学問です。当研究室は汎動物学的視点から尿路閉塞の重要性に着目しています。結石による尿管の閉塞は、ヒトで世界三大疼痛と称される激痛を伴います。産業動物や伴侶動物も本症に罹患し、特にネコの症例が多くみられます。飼養動物の慢性疾患はオーナーにもストレスや不安を与え、動物とヒト双方に関連する社会的問題とななります。

ネコの尿管閉塞に関連する3つの課題を挙げます。

  1. 臨床的な悪性度:完全な尿路閉塞は急性腎障害を導き、閉塞解除の遅延は死につながります。また、部分的な尿路閉塞の持続は慢性腎臓病(CKD)を導きます。ネコでは、15歳以上の約8割がCKDを発症し、CKD症例の約7割は上部尿路(腎盤~尿管)の尿石症・尿路閉塞を併発します。
  2. 難しい診断:尿検査は結石や結晶を検出するが、閉塞を評価できません。ネコの尿管内径は約0.4 mmと細く、一般画像診断による閉塞評価は困難であり、早期診断の難しさはCKD・尿石症併発率の高さからも伺えます。
  3. 治療法の課題:ネコの重度~完全尿管閉塞は、ステントなどで外科的に治療される一方、侵襲性・感染・再閉塞が問題となります。部分的な閉塞症例には輸液や利尿に加え、尿管平滑筋弛緩による閉塞解除が応用されます。ヒト医療を模して、アドレナリンα1A受容体拮抗薬が投与されますが、ネコ尿管組織内の受容体発現は不明です。

当研究室では、これらを背景に民間動物病院と協力し、課題解決に有用な知見を得るために研究を続けています。

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