ネコ腎臓の構造的な特徴に関する報告が発表されて100年以上経ちますが、不明な点は未だ多く残されています。当研究室では、ネコとイヌの正常な腎臓の組織学的特徴、とくに再吸収装置である尿細管の構造を比較し、下記を明らかにしました。
これらの発見は、ネコとイヌの腎臓の組織学的特徴や病態生理を理解する上で重要です。今後も種特異的な腎臓の構造や機能の違いを明らかにし、ネコが尿細管間質性障害に感受性が高い理由を追究します。
図1. ネコとイヌの腎臓組織像の模式図
上部の模式図は成ネコのネフロンと集合管(CDs)を示しています。ネコでは、近位尿細管(PTs)は上皮細胞の細胞質内の脂肪滴(LDs)含有量に応じて4つのセグメントに分けられます:近位曲尿細管(PCT)LD++、PCTLD+、近位直尿細管(PST)LD+、PSTLD-の順に糸球体から並んでいます。ネコとイヌの腎臓のPTの上皮細胞はナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)のmRNAを発現していますが、ネコのPSTLD-とイヌのPSTでは発現していません。下部の模式図に示すように、遠位尿細管(DTs)と集合管(CDs)は、ネコとイヌにおけるTamm-Horsfall蛋白1(THP1)、カルビンディン-D28K(CD28K)、アクアポリン2(AQP2)の発現の違いによって可視化できます。DTsとCDsのサイズと内腔は、成イヌに比べて成ネコの方が小さく狭くなっています。 PLoS One. 2024 Jul 3;19(7):e0306479.