尿路関連リンパ組織(Urinary tract-associated lymphoid structures, UTALS)の発見

当研究室は、腎臓の慢性炎症に対する新たな治療標的を「腎盤(=腎盂)」に⾒出しました。腎盤は腎臓でつくられた尿を受ける盃状の構造で、腎盤上⽪(=尿路上⽪)に内張りされます。当研究室は、腎盤実質に存在する免疫細胞や線維芽細胞等が加齢や腎臓病で増加し、尿路関連リンパ組織(Urinary Tract Associated Lymphoid Structure, UTALS)として発達することを発⾒しました。重要なことに、UTALSの発達は腎実質の慢性炎症・CKD進⾏と相関します。UTALSは、上⽪の直下に形成される点で⼆次リンパ組織、特に粘膜関連リンパ組織に似ますが、腎盤に活発な抗原取り込み機構はありません。⼀⽅、⾮リンパ組織に形成され、慢性炎症に関わるという点で三次リンパ組織の⼀種です。しかしながら、当研究室は、UTALSが「尿の腎盤組織への侵⼊」をその発達要因に持つユニークさを⾒出しています。

  1. UTALSの形成:慢性腎炎では、感染の有無に関わらず腎盂にUTALSが形成されます。
  2. 尿の役割:尿中のIFN-γが尿路上皮のバリア機能に影響を与え、UTALS形成に重要な役割を果たすことを発見しました。
  3. 免疫応答の誘導:尿がUTALS形成細胞を刺激し、サイトカインやケモカインの産生を促進することを明らかにしました。
  4. 自己抗原の関与:水疱性類天疱瘡の自己抗原候補である17型コラーゲン(BP180)が、UTALSの発達に関与することを発見しました。
  5. 慢性腎炎との相関:UTALS発達の程度が慢性腎炎の進行と正の相関を示すことを確認しました。
    この研究は、尿路感染症の有無に関わらず、尿-尿路上皮バリアの変化に基づくUTALS形成が慢性腎炎の新たな病態メカニズムである可能性を示しています。この発見は、慢性腎炎の新しい治療法開発につながる可能性があり、腎臓病学に新たな視点をもたらします。当研究室は今後も、UTALSの機能とその病態生理学的意義についてさらなる研究を進め、慢性腎炎症例の治療に貢献していきます。
UTALSの解析手法と形成メカニズムの模式図

図. UTALSの解析手法と形成メカニズムの模式図

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