心臓は脊椎動物の胚発生において、中胚葉から分化、形成される最初の臓器です。我々は、心筋発生過程において細胞死を意味する TdT-mediated dUTP nick end labeling (TUNEL)に陽性の心筋細胞が出現することを発見しました。TUNEL法では、死細胞のDNA損傷を認識します。
生体の器官形成および恒常性の維持には細胞死が重要役割を担いますが、これは遺伝子発現に制御されたプログラム細胞死であり、受動的なネクロ-シスとは異なります。プログラム細胞死は形態学的特徴によって細分化され、アポトーシスはその1つです。一般的に、アポトーシスにはCaspaseファミリーの活性化が重要です。
本研究で明らかにしたTUNEL陽性心筋細胞の多くはカスパーゼの活性化を伴わず、DNA損傷細胞である可能性を考えました。
我々の過去の研究より、骨格筋の分化には細胞死を伴わないカスパーゼの活性化が重要であることが示唆されていますが(Ikeda et al, 2009)、心筋では異なりました。
心筋発生過程において、TUNEL陽性細胞自体が心筋細胞の分化に重要なのか、心臓という1つの器官形態を形成していくうえで重要なのか、今後の更なる検討が必要です。