精細胞の分化と血液精巣関門の関わり

マウスは生後数日中に精細胞分化のFirst waveを開始し、以降、規則的な精細胞分化の波が精細管ステージを形成していきます。First wave由来精母細胞がパキテン期 (P)に達する生後15日頃、密着結合帯である血液精巣関門 (BTB) が隣接するセルトリ細胞間に形成されます。BTB構成蛋白質を欠損させたマウスは不妊症を呈することから、BTBは精子形成に必須であることは明白ですが、精細胞分化に果たすBTBの機能はよく解っていません。

本研究では「生体におけるビタミンA欠乏は可逆的に精子形成を停止させる」ことに着目し、ビタミンA欠乏食給餌 (VAD) マウスを用いてBTBの構築と精細胞分化の関連を解析しております。

VADマウスの性成熟過程を観察した結果、First waveの精細胞分化の開始と進行に異常は認められませんでしたが、Second wave以降の精細胞分化におけるプレレプトテン期(preL)/レプトテン期(L)精母細胞数の減少ならびにBTBの初期形成の遅延が認められました。

さらに、性成熟後のVADマウスでは、顕著な精巣変性と精子形成の停止に先行してBTBの崩壊が観察されました。ビタミンA再補填による精子形成再開後、preL/LおよびP精母細胞の出現と一致してBTBの再形成が認められたことから、BTBの初期形成には特定の分化段階に達した精細胞とセルトリ細胞の協調作用が必要であり、また、BTBは精細胞分化の開始ではなく、持続的な精子形成を維持する為に必須の構造であると考えられます。

本研究の一部は、JSPS科研費(No24002135; No24380156)の助成を受けて行っております。

参考文献

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