精子形成におけるゲートキーパー機構-血液精巣関門の解析-

哺乳類の精子は精巣内に存在する精細管で産生されます。精細管には将来精子となる様々な分化段階の精細胞(精祖細胞、精母細胞、精子細胞)と、それらの分化を支持するセルトリ細胞が存在します。隣接するセルトリ細胞間には、密着結合帯から成る血液精巣関門(Blood-Testis Barrier; BTB)が形成され、精細胞を基底側と管腔側の区画に仕切っています。

この関門より管腔側にある精細胞は、血液由来の代謝物や有害物質の作用から保護され、精子形成に適した微小環境で維持されます。マウスではプレレプトテン期 (preL) およびレプトテン期 (L) 精母細胞は精細管ステージ (St) VIII~IXにおいてBTBを通過し、基底側から管腔側の区画へ移動します(図1)。しかし、精細胞がBTBという強固なバリア構造を通過する仕組みはよく解っていません。

本研究では、精細胞のBTB通過機構の解明を目的として、BTB構成蛋白質の局在変化と機能を解析しております。これまでの解析によって、密着結合蛋白質であるCLDN3、CLDN11、OCLN、およびZO1は精細管の基底部付近に観察され(図2)、免疫電顕法によりこれらはBTBに局在することを確認しております。CLDN11、OCLN、ZO1の局在は、全Stにおいて精祖細胞と精母細胞の間で線状に観察された一方で、CLDN3の局在はSt VI~IXにおいてセルトリ細胞だけではなく、密着結合帯を作らないpreLおよびL精母細胞の細胞膜にも観察されました(図3)。

CLDN3の発現抑制の結果、精細胞のBTB通過遅延とpreL精母細胞からL精母細胞への分化遅延が認められたため、CLDN3は精細胞のBTB通過を促しているとともに、精細胞分化の進行を調節している可能性が示されました。

本研究の一部は、JSPS科研費(No24002135; No24380156)の助成を受けて行っております。

参考文献

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