泌尿器免疫機構の破綻

尿路(尿管や尿道)に通過障害が起きると、腎盤(=ヒトの腎盂)や腎杯が拡張し、水腎症を発症します。

その原因は先天的および後天的な要因に分けられ、後者では尿石症、腫瘍あるいは炎症が問題となります。

片側性の場合、もう一方の腎臓が機能を代償しますが、両側あるいは尿道の完全尿路閉塞は急性腎障害を誘導し、危険です。

獣医学領域では、イヌやネコで尿路結石による水腎症がみられます。

私達は、C57BL/6マウスとDBA/2マウスの交雑系統およびMRL/MpJ系統由来のコンジェニックマウスが尿管炎-水腎症を発症することを発見しました。

a:腎臓と尿管
b:拡張した腎盤腔と扁平化した腎臓
c:腎盤ー尿管接合部

罹患尿管は尿管近位側、特に腎盤-尿管接合部粘膜の乳頭状変化、リンパ球・好酸球浸潤を伴う炎症、尿中および尿管組織内の結晶状構造形成を特徴としていました。

網羅的遺伝子発現解析から、罹患尿管における炎症関連分子の発現上昇が示されましたが、特にChil3 chitinase-like 3(Ym1)の発現上昇が特徴的でした。

キチンは生物の外骨格やに微生物の細胞壁を構成しています。哺乳類では2種類のキチン分解酵素(キチナーゼ)が同定されており、キチン含有生物への防御能が示唆されています。

一方、キチン分解活性をもたないキチナーゼ様タンパクは内因性レクチンとして細胞の遊走や分化・増殖に関わり、炎症性疾患や感染症に関連します。

現在、これらの尿管炎発症マウスの感染症は否定的ですが、尿管の局所泌尿器免疫機構を刺激する理由を探っています。

参考文献

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