縦隔脂肪付属リンパ組織の発見

脂肪組織は一般にエネルギー貯蔵器官として機能しているが、レプチン、エストロゲン、レジスチン、TNFαなどのホルモンやアディポカインを産生する内分泌器官としても機能しています。

近年、ヒトとマウスで腸間膜脂肪組織に新規のリンパ組織が発見され Fat-associated lymphoid clusters (FALC)と命名されました。FALCは、Th2 サイトカインであるIL-5, -6, -13を大量に産生することで自然免疫に関与し、炎症や微生物感染に対する免疫機能を有します。

我々の研究グループは、マウス胸郭内の縦隔脂肪組織にも同様のリンパ組織の存在を発見し、Mediastinal fat-associated lymphoid clusters (MFALC)と命名しました。本研究の目的は、MFALCの形態、動態および機能について検討し、呼吸器疾患との関連を明らかにすることです。

MFALCの解剖学的位置と組織像

図. MFALCの解剖学的位置と組織像

MFALCのマウス系統差をC57BL/6N、DBA/2CrおよびMRL/MpJを用いて解析したところ、C57BL/6Nで有意ににMFALCが大きく、主としてCD4+T細胞が集塊を形成していることが明らかとなりました。

次に健常マウスのC57BL/6N、MRL/MpJ、BXSB/MpJ-Yaa+を、自己免疫疾患モデルのMRL/MpJ-lpr、BXSB/MpJ-Yaaを用い、MFALCの大きさと肺へのT細胞浸潤度(CD3+ T cell)との関係について検討しました。その結果、自己免疫疾患モデルマウスではMFALCが大きく、さらに肺へのT細胞浸潤度も高く、それらには有意な相関が認められました。

次いで実験的肺炎モデルにおけるMFALCと肺の病理学的変化を検索しました。C57BL/6マウスを用い、ブレオマイシン(50 mg/kg)を経気道的に投与し、肺炎を誘導し、投与後7日および21日でMFALCと肺の病理組織像を解析しました。

ブレオマイシンはマウスに肺炎を誘導し、7日では炎症性変化が、21日では線維化病変が特徴的でした。実験群のMFALCのサイズは対照群のそれよりも有意に大きくなりました。また、実験群の肺とMFALCには、多数の免疫細胞(T細胞、B細胞、マクロファージ、増殖細胞、顆粒球)がみられ、興味深いことに、PNAd陽性高内皮細静脈は実験群の肺にみられたが、対照群のそれにはみられませんでした。実験群のMFALCではGr-1陽性の多形核白血球や輪状単核細胞の浸潤が特徴的でした。肺とMFALCの病理組織学的パラメーターには有意な正の相関が認められました。

以上の所見より、MFALCは局所免疫ユニットとして肺の炎症に関与するとが考えられ、胸腔内には独特な生体防御機構が備わっている可能性が示唆されました。

参考文献

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