多細胞生物を構成する細胞系列は、大きく体細胞系列と生殖細胞系列に分けられます。体細胞系列は、個体の発生とともに様々な組織に分化し、その死とともに役割を終えます。一方、生殖細胞系列は卵や精子に分化するよう運命づけられた細胞系列であり、生命の連続性を担います。
生殖細胞は減数分裂とよばれる特殊な細胞分裂過程を経て形成されます。生殖細胞の異常は次世代の個体の死亡や発生異常につながるため、減数分裂はチェックポイントと呼ばれる監視機構によって制御され、異常な細胞は排除されることが知られています。
自己免疫疾患モデルであるMRL/MpJマウスの精巣は他の近交系マウスよりも小さく、精巣組織像として、ステージIVおよびXIIにおける精母細胞のアポトーシスが観察されます。
図. MRLゲノムに由来する精母細胞の減数分裂中期特異的アポトーシス
その一つについてQTL解析の結果、1番染色体100cM領域に有意な相関が認められ、分子生物学的解析から、原因遺伝子としてDNA修復に関与するExonuclease Iが同定されました。さらに、第二の責任因子を解析中です。
細胞監視システムは免疫器官では非常に良く発達した機構であり、リンパ球の正常な分化・成熟に重要です。本研究では、MRL/MpJマウスの精巣に認められる表現型を配偶子形成過程における細胞複製監視機構の異常と捉え、精子減少症ならびに免疫異常との関連性を解析していきます。
本研究の一部は、科学研究費補助金(2004-06年, No16380194; 2007-09年, No.19380162)、ノバルティス科学振興財団(2006年)の助成を受けて行っております。