|
近年、インフルエンザ、SARS、エボラ出血熱、ウエストナイル熱、プリオン病、結核、狂犬病等の人獣共通感染症が世界各地で発生し、人類社会を脅かしている。これらの病因は、野生動物に寄生して自然界に存続してきた微生物である。したがって、人獣共通感染症を克服するためには、病因微生物の自然宿主と伝播経路を解明し、もって感染症の発生予測、予防と制圧に資する研究を推進するとともに、斯かる新分野に貢献できる人材を育成する必要がある。
人獣共通感染症は、学術面においては医学と獣医学の、また行政面では医療を管轄する厚生労働省と家畜の伝染病を管轄する農林水産省の狭間に置かれている。したがって、人獣共通感染症は、研究教育および行政の何れにおいてもカバーされない領域にある。そのため、人獣共通感染症の教育・研究に責任をもつ組織は、これまで世界になかった。
北海道大学は2003年から21世紀COEプログラム「人獣共通感染症制圧のための研究開発」を推進し、2005年には人獣共通感染症の克服を目指す新たな教育研究施設として人獣共通感染症リサーチセンターを設立した。21世紀COEプログラムおよび人獣共通感染症リサーチセンターは感染症研究拠点として、ともに多くの成果をあげている。特に、インフルエンザウイルスの生態と病原性の分子基盤の解明ならびに高病原性鳥インフルエンザおよび新型インフルエンザ対策の立案・実施の教育・研究において、WHO、FAOおよびOIE等のレファレンスラボラトリーおよびグローバル・サーベイランス・ネットワーク拠点として国際社会に貢献している。獣医学研究科と人獣共通感染症リサーチセンターはさらに、アジア・アフリカ諸国、中・北米、ヨーロッパ各国との人獣共通感染症国際共同研究ネットワークの充実を図るとともに、国内外の大学院学生と若手研究員に対して研修コースを提供し、人獣共通感染症の制圧に向けた研究教育を推進している。
本グローバルCOEプログラムは、これまでの活動を基盤に、人獣共通感染症の克服に向けた教育・研究をさらに推進して、人獣共通感染症リサーチセンターを人獣共通感染症の国際共同教育研究拠点“International Collaboration Centers for Zoonosis Control”に発展させ、国内外の機関に感染症対策の科学基盤を提供する。さらに、人獣共通感染症対策の専門家Zoonosis Control Doctorを育成、供給することによって、全地球上の感染症克服を目指す。 |
|