

牛海綿状脳症や高病原性鳥インフルエンザウイルス感染症などの人獣共通感染症が人類の生存基盤を脅かしていますが、このような人獣共通感染症は毎年1種類のペースで新たに出現すると予測されています(WHOレポート、2007)。この他、薬剤耐性菌の蔓延、バイオテロの脅威など、感染症のリスクは増大の一途を辿っています。このような感染症への対策に当たっては、病原体の病原性解明、病原巣の特定、変異機構の解明、伝播機序解明、予防・治療法解明のみならず、感染症に対する集団疫学、社会に与える影響のシミュレーションと危機管理に関するリスク評価・管理学の専門家が必要です。欧米の先進諸国にはこのような専門家の育成を目的とした教育研究機関が存在し、英国での牛海綿状脳症と変異型クロイツフェルト・ヤコブ病対策を主導してプリオン病の征圧に成功したことは記憶に新しいものです。しかし、我が国にはリスク評価・管理学の専門家は極めて乏しく、専門の教育研究機関もないのが現状です。人獣共通感染症の多くは野生動物に由来し、その征圧には獣医学の基礎が必要です。そこで、北海道大学大学院獣医学研究科と東京大学大学院農学生命科学研究科はリスク評価・管理学の専門家を共同して育成し、人獣共通感染症対策と食の安全に関する教育研究プロジェクトを強化するとともに、我が国全体の感染症対策の強化に資するため、本トレーニング計画に取り組むことを決意しました。
本計画では両大学の大学院学生の中から感染症征圧を志し、英語でのコミュニケーション能力を十分に有するものを選抜し、長期間、欧米の専門教育・研究機関に派遣し、関連科目の単位取得と研究に従事させます。また、米国とカナダのBiosafety
Level 4 (BSL4) 研究施設に博士研究員および助教を3ヶ月間派遣して研究を行わせ、我が国で設置・稼働が予定されているBSL4研究施設を活用することのできる研究者を育成する計画です。 |