北海道大学大学院獣医学研究院・獣医学部

微生物学教室

Laboratory of Microbiology, Faculty/School of Veterinary Medicine, Hokkaido University.

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インフルエンザウイルス研究

インフルエンザウイルスライブラリーの構築

 家禽、家畜およびヒトを含む哺乳動物のインフルエンザの疫学調査(グローバルサーベイランス)を実施し、分離されたインフルエンザウイルスと実験室内で作出した遺伝子再集合ウイルス2,000株以上を系統保存し、その情報をデータベース化しました。HAとNAの亜型のすべての組み合わせである、144通りのウイルスがこのライブラリーに保管されています。

 2009年、豚由来H1N1亜型ウイルスによるパンデミックインフルエンザが出現し、深刻な国際社会問題となりました。また、2013年中国で、H7N9インフルエンザウイルスの人への感染が多数報告されました。当研究室のウイルス株ライブラリーから、ワクチン株を選抜し、試製したワクチンの力価をマウスを用いて評価しました。ワクチンは、それぞれのウイルスの攻撃による臨床症状および肺でのウイルス増殖を有意に軽減することが明らかとなりました。本研究により、パンデミックインフルエンザ出現に際して、当インフルエンザウイルスライブラリーから迅速に安全なワクチン株を提供できることが明らかとなりました。

 当研究室保有のインフルエンザウイルスは、すべてデータベースに登録されており、一元管理されています。

インフルエンザウイルスの生態解明

 インフルエンザウイルスの自然宿主である野生水禽が保有するウイルスを調べることにより、新型インフルエンザウイルス出現や高病原性鳥インフルエンザウイルスの伝播の解明につながります。毎年、北海道とモンゴルを中心に、渡り鳥の糞便を採取し、インフルエンザウイルスを分離しています。2010年秋から2011年春にかけて、H5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが国内の野生水禽および家禽から分離されました。分離ウイルスの解析の結果、ウイルスは野鳥を介して日本国内に持ち込まれたこと、このウイルスは中国の家禽の間で流行しているウイルスが野生水禽に感染し、渡りの経路に沿って運搬されたことが明らかになりました。

 

 また、2011年以降の調査で高病原性鳥インフルエンザウイルスが野生水禽から分離されないことから、高病原性鳥インフルエンザウイルスは野生水禽に定着していないことが示されました。また、高病原性鳥インフルエンザの流行地であるベトナムにおいて、野鳥及び家きんを調査し、生鳥市場が疾病制御の要であることを明らかにしました。今後もインフルエンザウイルスの生態調査を継続し、動物とヒトの健康に役立つ成績を発信していきます。

高病原性鳥インフルエンザウイルスのニワトリに対する病原性とサイトカイン応答

 ニワトリが高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染し、急性経過を経て死亡する例では、宿主に過剰なサイトカイン応答が認められます。またそのニワトリは、ほとんど肉眼病変が認められません。このニワトリの死亡は、ウイルスの感染増殖による組織の損傷よりも、ウイルス増殖に対する宿主の過剰応答に起因するものと考えられます。これら宿主のサイトカイン応答と高病原性鳥インフルエンザウイルスのニワトリに対する病原性との関係を明らかにする研究をしています。

ウイルスの宿主間伝播機構の解明

 鳥から分離されたウイルスは「鳥型レセプター」を認識し、ヒトから分離されるウイルスは「ヒト型レセプター」をより強く認識します。このレセプター特異性の差が鳥とヒトのインフルエンザウイルスに対する感受性を決める重要な因子です。一方で、ブタは鳥型とヒト型両方のレセプターを有することが知られています。我々は鳥から分離されたウイルスをブタに3代接種継代することで、ヒト型レセプター特異性のウイルスが選択されてくることを見出し、ヒトのパンデミックインフルエンザ出現のメカニズムを明らかにしました。

 

 また、自然宿主であるカモから家禽であるニワトリに直接ウイルスが伝播することはありません。本研究では、カモとニワトリのインフルエンザウイルスに対する感受性の差を、レセプターの構造が「鳥型」の中で異なることで説明可能であると明らかにしました。

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