一般外科/軟部外科のご紹介

 外科的な処置を要するあらゆる病気の治療を専門とする診療科です。体の様々な部位に発生した腫瘍(癌)の切除や、尿管・尿道・膀胱結石の摘出、胆嚢の摘出、会陰ヘルニアの整復、および門脈体循環シャントの整復など、先天性の病気から後天性の病気まで様々な外科手術を行っています。診断から治療までを同一の科で担当することにより、必要な術前検査、手術の詳細と合併症のリスク、および術後必要となる補助治療まで、治療の全体像をわかりやすくご理解頂けるよう取り組んでいます。

 

診断

 初診で受診された場合は問診を伺った後に院内でお預かりし、各種検査を進めていきます。検査は血液検査、レントゲン検査、超音波検査などの麻酔を必要としない検査からはじまり、必要に応じてCT、MRI、内視鏡検査などの全身麻酔下で行うものを実施します。腫瘍(癌)が疑われる病変を持つ場合には、一部組織などを採材する(生検)場合もあります。生検は外部の検査機関に診断を依頼するため、結果をお伝えするまでに1週間ほどお時間を頂きます。また、手術を実施する上で主訴の疾患以外の病気が見つかることも少なくありません。特に高齢の場合には内分泌疾患を併発していることもあり、それらが手術の合併症リスクを高めてしまうこともあります。そのため、術前にそれらの疾患が見つかった場合には、まずは内科治療を優先することもあります。

治療【手術】

 本院の一般外科/軟部外科では、主に火曜日と木曜日を手術日として定めています。手術を受ける場合には、手術前日にお預かりをさせていただき院内で前泊し、翌日の手術に備えていただきます。手術室は5室(一般手術室3室、陽圧手術室2室)あり、一般外科/軟部外科の手術の多くは一般手術室で行われます。透視装置を用いる手術(ステント設置術、SUB設置術など)は、陽圧手術室で実施します。また、緊急的な対応が必要な場合には、手術日以外(月、水、金曜)にも手術を行うこともあります。

 手術日には手術前室で麻酔をかけ、毛刈りや消毒などの手術に向けた準備を行います。準備が完了した症例は手術室へ移動し、手術が開始されます。手術が終了すると、麻酔を醒まして入院室へ移動します。術後は痛みの程度や、元気食欲を観察しつつ、翌日以降には飼い主様と退院の時期を相談します。

 

術後

 手術から2週間ほどで抜糸を行います。皮膚の中で縫合を行うこともあり、その場合には術創の確認をさせていただきます。病気の種類によっては定期的な検診を受けていただく場合や、抗がん剤や放射線などの補助療法を推奨させていただく場合があります。

診療日

 
担当医 金  (手術日) 細谷 (手術日) 木之下

診療科スタッフ

教員

細谷 謙次

金 尚昊

木之下 怜平

竹内 恭介

レジデント

松本 創

研修獣医師

佐々木 慎弥

岩沢 亜咲

田村 雄治

川上 侑記

疾患の紹介

尿管結石

臨床症状としては急性の元気食欲低下、嘔吐を示すようになります。緊急的な外科手術が必要になる場合もある疾患です。レントゲン検査や腹部超音波検査で多くが診断されますが、細かな結石により閉塞を起こしている場合もあり、CT検査などが必要になることもあります。また、再発が多い疾患であることも知られており、術後の食事療法や定期検診も重要です。本院では主に以下に挙げた治療法を行っています。

【尿管切開術/膀胱尿管新吻合術】

尿管切開術は結石により尿管閉塞を起こした症例に対して行われる、最も一般的な手術です。結石により閉塞を起こした部分の尿管を切開して、結石を除去した後に尿管を縫合します。膀胱尿管新吻合術は閉塞部が膀胱に近い場合に、尿管を一度膀胱から切り離して新たにつなげなおす手術です。閉塞部位や尿管の拡張の程度に応じて、これら2つの手術を使い分けます。

尿管は細い管状の構造であり、内腔はとても細い組織です。特に通常の猫の尿管内腔径は0.4mmととても細く、結石による尿管拡張を呈していても数ミリ程度の場合も少なくありません。このように細い管を縫うため、尿管切開手術による術後の合併症としては尿管縫合部の狭窄などが知られています。

【腎瘻カテーテル設置術】

腎瘻カテーテルは尿管閉塞による急性腎不全のために一般状態が極めて悪化し、長時間の麻酔による手術が危険と判断された症例などに用いられます。腎臓に直接カテーテルを挿入し、そのカテーテルの先を腹壁-皮膚を貫通させて外界に出すことで、直接尿を腎臓から排出させます。比較的短時間での処置が可能なため、動物への負担も少ない処置です。しかし、設置後にカテーテルが不意に抜けてしまうこともあり、長期間維持することは一般的に困難とされています。そのため、本院では尿管切開術や新吻合術などを行える状態まで、動物の体調を整えるという目的で実施されます。

【尿管ステント設置術】

尿管結石は再発の多い疾患であることから、一度手術を行っても半年から1年ほどで再閉塞を起こす症例も少なくありません。これを予防する目的で、ステントと呼ばれる専用の管状のインプラントを腎臓-尿管-膀胱の内部に設置します。しかし、結石ができやすい体質の場合には、ステントの中にも結石が形成され閉塞を起こしてしまうこともあります。

【SUB(人工尿管)設置術】

Subcutaneous Ureteral Bypass(SUB)は尿管を温存した排尿経路の確保が困難な場合や、尿管閉塞の再発リスクが高いと判断された動物に対して用いられます。SUBは専用のカテーテルとポートから構成されており、腎臓と膀胱に別々のカテーテルをそれぞれ設置し、そのカテーテルどうしをポートを介して接続するものです。カテーテルの一部とポートは皮下に設置し、定期的にポート部分から液体を通してカテーテルの中を洗浄します。この洗浄の操作によりステントと比べるとカテーテル内が閉塞するリスクは低減されますが、1-2カ月毎の通院が必要になります。

 

胆嚢粘液嚢腫

胆嚢は肝臓で産生された消化酵素を、一時的に貯留している臓器です。胆嚢粘液嚢腫では胆嚢内の粘稠性の高い物質が、胆嚢から消化酵素を十二指腸へ運び出す管(総胆管)の中を閉塞させます。高齢の動物に多く認められ、症状としては嘔吐、食欲低下、および黄疸が認められます。重度な場合には腹腔内で胆嚢が破れ、腹膜炎を呈して死亡に至ることもあります。また、膵炎を併発する場合もあります。

【胆嚢切除術】

胆嚢粘液嚢腫の場合、ほとんどの症例で胆嚢を摘出する手術が行われます。胆嚢は肝臓に挟まれた臓器であるため、手術では肝臓から胆嚢を剥離し、根元から胆嚢を切除します。総胆管は温存するため、肝臓からの消化酵素は直接総胆管から十二指腸へ流れます。総胆管が正常で内部の閉塞が無いことが前提となるため、手術時には胆嚢を摘出する前に総胆管の開通性を確認します。

胆嚢切除手術で最も頻度が多い合併症は膵炎とされています。術前に膵炎がない場合にも、術後の炎症などが原因となり膵炎を発症することもあります。膵炎の症例では十二指腸を介さない食事が必要となるため、術前から膵炎がある症例や、長期間体調不良が持続していた症例などでは、手術の際に十二指腸より肛門に違い側の腸へ皮膚と腹壁を貫通させたカテーテルを挿入し(経腸チューブ)、術後の栄養管理の補助を行うこともあります。

慢性外耳炎/中耳炎

外耳炎が慢性化すると耳道の肥厚や石灰化が生じ、内服や洗浄などの内科治療のみでは十分な対応ができなくなります。特にアメリカンコッカースパニエルやフレンチブルドックなどの犬種では外耳炎が悪化しやすく、外科的治療が必要になることもあります。犬猫の耳道はL字型をしているため、外から洗おうとしても奥まで十分に薬液が届かないことも外耳炎を悪化させる要因です。外耳炎が悪化すると鼓膜やその奥の鼓室包と呼ばれる中耳領域まで炎症が波及します。

【外側耳道切除術】

外側耳道切除術は耳道の一部を切り開くことにより、奥側の耳道の通気性を改善させ、洗浄や薬液の投与を行えるようにするものです。手術侵襲も少なく、耳の機能も温存できますが、術後も定期的な内科管理が必要です。外耳炎の程度が重度な場合には、この術式が適応できない場合もあります。

【全耳道切除術】

全耳道切除は耳の穴の部分からL字型の耳道をすべて切除する術式です。耳道がすべてなくなるため術後の継続的な内科管理などが必要ありません。しかし、外側耳道切除手術と比較すると侵襲性は高く、顔面神経麻痺や深部膿瘍など合併症のリスクが伴います。顔面神経麻痺については一時的なものから永久的なものまで、神経の損傷の程度によってその重症度が異なります。