1954 (昭和29) 年 | 獣医学部に「家畜薬理学講座」として設置 |
1963 (昭和38) 年 | 第1代教授 大賀晧 就任 (~平成3年) |
1991 (平成3) 年 | 第2代教授 中里幸和 就任 (~平成11年) |
1995 (平成7) 年 | 獣医学研究科「比較形態機能学講座薬理学教室」に改組 |
1999 (平成11) 年 | 第3代教授 伊藤茂男 就任 (~平成27年) |
2009 (平成21) 年 | 伊藤茂男教授が大学院獣医学研究科長・獣医学部長・人獣共通感染症センター長に選出 |
2017 (平成29) 年 | 獣医学研究院「基礎獣医科学分野薬理学教室」に改組 |
2018 (平成30) 年 | 第4代教授 乙黒兼一 就任 (平成30年~) |
薬を臨床現場で使う場合は、その作用機序を常に念頭に置いて処方しなければなりません。薬理学は、生理・生化学的な幅広い知識に基づき薬物作用の発現機序を研究する学問です。薬理学教室は、薬や化学物質の生体に対する作用を、神経・筋肉・分泌組織あるいは細胞を用いて調べること、またこれらの薬物反応を解析することにより生体機構を明らかにすることを目指しています。最近はグリア細胞に着目し、神経伝達物質やグリア伝達物質(gliotransmitter)に対する反応や細胞内メカニズムを検討することで、その機能解明に取り組んでいます。
中枢神経系において、アストロサイトなどのグリア細胞は生理的条件下や病態下において様々な機能を持ちます。近年ではグリア細胞から放出された伝達物質(gliotransmitter)が、シナプス伝達の調節や炎症の制御に関与することが知られています。そこで我々は培養アストロサイトを用いて、ATPやアデノシンといったグリア伝達物質の産生調節について研究しています。これまでに、アストロサイトのATP放出やアデノシンへの代謝の調節メカニズムを明らかにしてきました(図1)。
これらのグリア伝達物質の産生調節が、中枢神経系の生理・病態生理において重要な役割を果たしている可能性があります。特にATPやアデノシンなどのプリンは、うつ病などの精神疾患に関与することが明らかになっています。現在、うつ病態と中枢神経系のプリン異常の関係を明らかにするために、うつ病モデルマウスの行動と脳内のプリン放出・代謝機能変化の解析に取り組んでいます。
図1 線維芽細胞成長成長因子2(FGF2)がFGF受容体とMAPK経路を介して、培養アストロサイトのATP放出と細胞外プリン代謝を促進することを明らかにしました。 |
神経伝達物質ノルアドレナリンは、中枢神経系において覚醒・睡眠サイクルやストレス反応など、重要な生理的機能を持っています。また、アドレナリン受容体の一種であるα2受容体に作用する薬は鎮静薬として医療や獣医療で用いられています。我々はアドレナリン受容体を介したアストロサイトの突起形態の調節機構として、これまでにα作動薬やβ作動薬が培養および生体アストロサイトの突起形態を制御することを明らかにしてきました(図2)。
こうしたアストロサイトの突起形態は、多くの生理的機能に関与しており、ニューロンや血管機能の調節に重要であることが知られています。さらに、脳老廃物の排出系として提唱されているグリンパティックシステムにもアストロサイトが関与している可能性があります。現在、in vivoからin situ、in vitro実験系を組み合わせ、アストロサイトの突起形態が中枢神経系機能にどのように関与するか解明に取り組んでいます。
図2 アストロサイトの突起形成がアドレナリン受容体サブタイプによって制御されることを明らかにしました。 |