診療科のご紹介

腫瘍科

体の中にできるさまざまな腫瘍やリンパ腫・白血病といった血液系腫瘍の診断と治療を専門とする診療科です。腫瘍の正確な診断、外科治療、放射線治療、内科治療などに対応するべく、各分野を専門とする複数の獣医師による診断と治療を行います。下記の検査および治療に対応しております。

各種検査法P7100044.JPG

・細胞診・・・腫瘍の一部に細い針を穿刺して細胞を採取する検査です。麻酔もいらず、痛みやストレスもほとんど伴わない短時間で低侵襲な検査のため、腫瘍診断においてはスクリーニング的に行われます。多くの場合、この検査により腫瘍かそうでないか、良性か悪性かなどの判断がつきます。腫瘍の種類によっては、本検査のみで確定診断がつくこともあります。

 

 

・各種画像検査・・・レントゲン撮影、超音波検査、コンピュータ断層撮影(CT)検査、磁気共鳴画像(MRI)検査など、腫瘍の広がりや肺や腹腔内臓器に転移していないかなどを診断します。特殊な技術や設備を要する検査(超音波造影検査/CT検査/MRI検査)に関しては画像診断部門との連携により実施しています。

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・各種遺伝子検査・・・一部の腫瘍では、腫瘍の診断や治療法の選別に各種遺伝子検査が有効です。従来の検査法では診断が困難な腫瘍の確定診断や、抗がん剤の副作用が特に出やすい個体の判別などに用いられることもあります。ごく微量のサンプルで実施可能なため、動物にかかる負担が少なくて済むのも利点です。

・組織生検・・・腫瘍の確定診断には、腫瘍組織の一部を塊として採材して検査する場合があります。多くの場合麻酔を必要とする検査ですが、体の深い部分にある腫瘍や、肺などの重要臓器の近くにある腫瘍などでも、できる限り安全に最小限の負担で診断材料を採取することが重要です。そのために、さまざまな専用器具や画像診断補助を用いて組織を採取しますが、組織生検には危険性を伴うこともあります。個々の症例の生検の必要性や危険度に関しては担当医から説明があります。

各種治療法

・外科療法

外科療法とは、手術をして物理的に腫瘍組織を切り取る治療法です。物理的に腫瘍細胞を取り除いてしまうため、転移しない良性の腫瘍や、転移する可能性の低い悪性腫瘍には、外科療法で根治させられるものが多くあります。ただし、腫瘍の種類によっては、周りの正常組織への浸潤性が強く、一見取り切れたかにみえても、細胞レベルでの取り残しが出てしまい後で手術部位から再発することもあります(局所再発とよびます)。

  また、転移性の高い悪性腫瘍の場合は、手術だけでは治せないこともあります。つまり、手術したときにすでにリンパ節や肺などにわずかな腫瘍細胞が散ってしまっている場合には、原発巣を取り除いても、数週間~数ヶ月後に転移した先で腫瘍が再発する可能性が高いのです。この場合は化学療法など、全身的に腫瘍細胞の増殖を抑制する治療を併用することもあります。

  局所再発を避け確実に腫瘍をコントロールするために、腫瘍組織を切除するときには腫瘍が周りの正常組織に包まれた形で切除します。悪性度の高い腫瘍を根治するためには、時として周りの正常組織の機能を損なわなくてはならないこともあります。腫瘍の種類と場所によって、どの程度周りの正常組織をつけて切除するかを判断し、手術の影響を最小限にしてとどめ、かつ腫瘍細胞を取り残すことなく切除するためには、腫瘍治療専門の外科のトレーニング(腫瘍外科学といいます)を受けた外科医の技術が必要です。

  外科療法では、正常な体の一部とともに腫瘍組織を摘出するため、手術によって体の機能に影響が出ることもあります。しかしながら、適切な技術を使えば、飼い主の皆さんが思ってるよりもはるかに大きな手術にも動物は問題なく適応します。たとえば、脳や脊髄にできた腫瘍でも手術可能なことは多いですし、肝臓や腸や腎臓といった内臓も必要と判断されれば手術で一部摘出してもちゃんと元どおりの生活を送ることが可能です。また、口の中や顔面にできた腫瘍の場合も、機能や顔貌を損なうことなく治療可能な場合が多くあります(個々の症例の病変の大きさや場所により、手術の影響は異なりますので、詳しくは担当医にご相談ください)。この他、肺や心臓の近くでも、経験のある外科医と麻酔スタッフがいれば、安全に手術可能な場合が数多くあります。

  逆に手術には向かない場所(鼻腔内など)や、腫瘍が広範囲に浸潤していて、丸ごと切除すると正常機能に重大な支障をきたすことが予想される場合は、放射線療法などを併用する必要があります。どこまで手術できるのか、どうすれば安全に手術できるのか、どの程度取れば再発を防げるか、これらを追及するのが腫瘍外科学です。正しい腫瘍外科学の知識と経験をもった外科医による外科療法は、現在の腫瘍の治療で最も強力で、治る確率も高い治療法です。ただし、腫瘍の種類によっては外科療法だけでは不十分なこと、外科療法には適さないことなどがありますので、治療方針の決定は担当医にご相談ください。

・放射線治療 →詳しくはこちら

放射線療法とは、強力なX線を浴びせて、腫瘍細胞を死滅させる治療法です。腫瘍細胞は正常細胞よりも放射線に弱いという特徴を持つため、正常組織が耐えられる程度の少量の放射線を何回も繰り返し照射することにより、正常組織を温存したまま、腫瘍組織を選択的に治療することが可能です。

  このように、外科療法にはないメリットを持つ放射線療法ですが、2つ弱点があります。一つ目は、腫瘍細胞によって放射線感受性がさまざまであり、効かない腫瘍も多いことです。外科療法とは違い物理的に腫瘍を取り除くわけではありませんので、どの程度治療効果が得られるかは個々の腫瘍の放射線感受性によります。二つ目は、放射線を浴びた周囲の正常組織に対する副作用です。腫瘍細胞に選択的に効くとはいっても、正常組織が全くダメージを受けないわけではありません。放射線治療の副作用は放射線を照射する場所や範囲、また線量によって異なるためにどの程度の副作用が予想されるかは一概にはいえませんので、詳しくは治療担当医にご相談ください。

  また、放射線治療といっても治療器の性能はさまざまです。一般に人医療ではリニアック(またらライナックとも呼びます)という放射線治療器が用いられます。この機械は腫瘍治療を目的に作られた、最適な治療器ですが、動物用にリニアックが導入されている病院は少数です。当院では2014年に放射線治療施設を新規建設し、国内初の高精度リニアックを導入し、強度変調放射線治療(IMRT)などの先進医療を実施しています。

  リニアックとは別に、動物医療ではオルソボルテージ機と呼ばれる放射線治療器が腫瘍治療に用いられる場合があります。こちらは、リニアックよりも弱いX線しか照射できないため、大きな腫瘍や深部の腫瘍(脳腫瘍など)は治療が難しい、皮膚への副作用が強い、骨の壊死が起こる場合があるといったデメリットがありますが、麻酔時間や費用面での利点もあり、現在でも動物には使用されることがあります。

  放射線療法は手術不可能な腫瘍や、手術だけでは取り切れなかった腫瘍の術後補助療法として用いられるのが一般的です。詳しくは放射線治療外来のページをご参照ください。

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           ↑強度変調放射線治療により眼球への線量分布を最小限にとどめた治療プランの例。

 

 ・化学療法(抗がん剤治療) →詳しくはこちら

外科療法と放射線療法が局所療法、つまり治療した場所のがん細胞にしか有効でない治療法であるのに対し、化学療法では、抗がん剤を注射や内服薬のかたちで全身投与し、全身的に腫瘍細胞を攻撃します。このため、化学療法はリンパ節や肺など、全身性に微量の腫瘍細胞が飛び散っていると考えられるときに、転移の進行を予防したり、遅らせたりするために有効な治療法です。また、リンパ腫白血病など、はじめから全身性の腫瘍には、化学療法のみで治療を行います。腫瘍の種類によっては、抗がん剤に対する反応が良好で、一度の治療で顕著な腫瘍の縮小が見られることもありますが、抗がん剤に対する反応性がよくない腫瘍も多くあります。詳しい適応は、担当医にご相談ください。

  抗がん剤について、もっとも多くお聞きする不安はその副作用についてです。人医療で用いられる抗がん剤のイメージからか、抗がん剤を使うと毛が抜ける、ひどい嘔吐をする、下痢をするといった、とてもつらい治療法というイメージをお持ちになる方もおられるかと思いますが、獣医療での化学療法では生活の質(QOLを重視し、嘔吐や食欲の低下などを極力おこさないやり方で治療します。また、抗がん剤によって多少被毛の質が変化することがありますが、脱毛が見られることはまれです。

  現在では、抗がん剤による吐き気や下痢を予防するために、さまざまな薬が利用可能です。ただし、抗がん剤によって吐き気や下痢が問題となるのは治療初期のみで、各患者に合わせて、吐き気などが出ない程度に抗がん剤の量を調整しますので、基本的には通常通りの生活が送っていただけることがほとんどです。副作用を出さないように投与量を下げるのは簡単ですが、それでは腫瘍に対する効果も半減です。副作用を最小限にして、最大限の効果を得るには、抗がん剤の使用経験の豊富な専門獣医師による治療と、ホームドクターによるサポートが不可欠です。

  また、抗がん剤にはいろいろな種類があり、副作用の出方や量の調節の仕方も様々です。腎臓で代謝される薬もあれば、肝臓で代謝される薬もあります。そのため、抗がん剤の副作用はそのこそのこによって違います。各抗がん剤による副作用や気をつける点については、ホームドクターや当院の担当医による説明を受けて下さい。

  近年、がん研究が進むに従って、腫瘍細胞に選択的に作用して、従来の抗がん剤とはことなる作用機序で腫瘍を治療できる“分子標的薬”と呼ばれる薬たちが人医療では使われ始めています。これらの薬たちは、従来の抗がん剤が効かなかった腫瘍にも有効性がある点や、腫瘍特異的なので副作用が少ないといった利点があります。小動物においても、動物用分子標的薬が臨床応用され始めてきており、一部の腫瘍で目覚ましい効果を上げています。詳しい適応は担当医にご相談ください。

・分子標的療法

・免疫療法

・光線力学療法

・インターベンショナルラジオロジー(IVR)

  IVRというと聞きなれない方もいらっしゃるかと思いますが、いわゆるカテーテル治療と理解して頂ければと思います。手術のように皮膚を切開して体の中にアプローチするのではなく、針とカテーテルを用いて、血管などの体にもともとあるルートを利用して体の内部を治療する方法です。手術とはことなり動物の負担を最小限にして腫瘍を治療できることが最大のメリットです。腫瘍による血管や尿路の閉塞を解除したり、腫瘍に流れ込む動脈に選択的に抗がん剤を投与したり腫瘍血管を塞栓させたりと、IVR技術は腫瘍の治療において幅広く応用されています。

  当診療科で対応可能なIVR治療は以下の通りです。

  ・尿道バルーン拡張術

  ・尿道/血管/気管の閉塞に対するステント拡張術

  ・経皮的尿管ステント設置術

  ・動注化学療法/腫瘍動脈塞栓療法

  ・胸腔/腹腔ポートによる体腔内化学療法

  ・その他IVR各種(お問い合わせください)

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